月明かりの記憶

久しぶりに車中泊をした。

出かけるまで、少しだけ腰が重かった。
でも走り出してしまえば、やっぱり旅はいい。

この日は、和紙の手漉き体験から始まった。

冷たい水の中に手を入れて、
豆腐みたいな繊維を混ぜる。
簡単そうに見えたけれど、思うようにはいかない。

デザインも、少しにじんでしまった。

それでも面白かった。
うまくいかない感じも含めて、体験だった。


そのままRVパークへ向かった。

到着したときは、少しほっとした。

外部電源をつないで、
冷蔵庫を動かそうとしたら――動かない。

一瞬、壊れたかと思った。

DC12Vのスイッチが別系統だったことを思い出すまで、少し焦った。

久しぶりの車中泊は、どこかぎこちない。

夜は少しだけお酒を飲んだ。

完成させたはずの車内に座る。

二段ベッド、床下収納、電子レンジ、冷蔵庫。
自分なりにやり遂げたレイアウト。

「よくやったな」と思えた空間。

でも――

どこか落ち着かない。

ゴロンとしたくならない。

連泊したいとも思わない。

身体が、正直だった。


翌朝。

少し気持ちを切り替えて、くるくるなるとの道の駅へ。

海鮮丼を楽しみにしていたけれど、
思っていたよりも混んでいて、今回は見送ることにした。

なんだか今回の車中泊は、
少しずつ思い通りにいかない。

でも、そのズレが、静かに何かを教えてくれていた。


ふと思い出す。

前のレイアウト。

ソファーベッドに腰掛けて、
コーヒーを淹れて、
iPadでYouTubeを流していた夜。

ダイソーのパズルマット。
網棚。
少しラフで、少し頼りない。

でも、広かった。

視線が抜けていて、
人が真ん中にいた。

九州に行ったあの夜の開放感。

あの空間は、確かに「部屋」だった。


今の車は、少しだけ荷物が主役になっていたのかもしれない。

機能は増えた。
完成度も上がった。

でも、癒しは減っていた。


うまくいかない日もある。

でも、その夜にしか見えない月もある。

次は、もう少し落ち着く部屋で、
コーヒーを淹れよう。