今の相棒の価値

車検の時期が近づくと、どうしても考えてしまう。

「次の旅は、もっと快適にできないだろうか?」

そんな気持ちが背中を押して、

ある日ふと、近くのビルダーに立ち寄った。

■ そこで“出会ってしまった”一台

展示車の中に、ひときわ落ち着いた佇まいの車があった。

中古のミニチュアクルーズ。

写真ではなく、実物だったからこそわかった。

家具の質感。

色のトーン。

空間のまとまり。

そこに座った瞬間の、あのしっくりくる感じ。

「……これはいいな。」

ビルダー車ならではの“作り込まれた空気”があって、

その場で思わず旅を想像してしまった。

車検も近い。

ちょうどいいタイミングかもしれない。

そんな気持ちがふくらんでいった。


■ だけど、今回は縁がなかった

現実には、手が届かなかった。

だけど不思議と、落ち込む気持ちはあまりなかった。

なぜだろうと考えてみた時、

自然と視線が今の愛車へ向いた。


■ 今の車に積み上げてきたもの

改めて車内を見渡すと、

  • 上でも下でも寝られる二段構造
  • 足を下ろせる“逃げ場”
  • 電子レンジとポタ電がきれいに収まった収納
  • ギャレー代わりの仕掛け
  • 冷蔵庫までシンデレラフィット
  • 対面で座れる空間
  • そして、どんな土地でも安心できる仕様

これらはビルダーの“作品”ではなく、

私の旅のクセや生活リズムに合わせて

時間をかけて出来上がった 理由のある装備 だ。

ミニチュアクルーズにはない、

“自分で作ってきた旅の形” が確かにあった。


■ もしミニチュアクルーズを選んでいたら

スタイリッシュで統一された空間だ。

旅はきっと快適だったと思う。

でもそのぶん、今の車にあるような

「使いながら進化していく自由さ」はなかったかもしれない。

そしてなにより──

この静かな満足感には、出会わなかっただろう。


■ 手にできなかったことが、教えてくれた

ミニチュアクルーズとの出会いは本物だ。

惹かれたのも本心だ。

でも、手が届かなかったその事実が、

逆に いまの相棒の価値を浮かび上がらせてくれた。

不足を埋める旅ではなく、

今ある車と、生き方を重ねていく旅。

それも悪くない。


■ 結局、旅は “自分の車を好きになるところから” 始まる

ミニチュアクルーズを見に行ったあの日は、

買えなかった日ではなく、

今の相棒の良さに気づいた日 になった。

そして今、また旅に出たくなっている。